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インタビュー・コラム

【連載第3回】マーケティングベースの営業チーム作り

BtoB/法人営業の新規開拓メソッド

マーケティングベースの営業チーム作り

私は営業マネージャーとして部門を担当することになり、競合に押されていた装置事業からエンジニアリング事業まで、チームで成果をだすための方策を考えるようになりました。

その鍵は、マーケティングベースの営業チームを作り上げることで、実際に成果を上げることができました。今回は、その重要性と効果について解説します。

マーケティングとはニーズに応えること

マーケティングとは、「売れる仕組みつくり」のことを言います。これは市場調査から商品開発、集客、営業、アフターサービスまで、全てのプロセスを含みます。

経済学の大家はこのように定義しています。

「マーケティングの目的は、顧客について十分に理解し、顧客に合った製品やサービスが自然に売れるようにすることなのだ」(経済学の父 ピータ―・ドラッカー)
 
「マーケティングを最も短い言葉で定義すれば『ニーズに応えて利益を上げること』となろう。」(マーケティングの神様 フィリップ・コトラー)

これを、そのまま営業活動の中で実現することが、売れる営業チームになるために欠かせません。

ここまで書くと当たり前のことだと思いますよね。けれど私が知る限りでは、営業チームのほとんどができていないというのが実態だと思います。

マーケティングベースの営業チームとは

例えば、
(1)営業マンには商品勉強をさせ、商品の良さをお客様に売り込ませる
(2)売りに行くお客様は、営業マンに決めさせる
(3)行動管理をして、とにかく大量の営業活動をさせる

このような営業チームは、マーケティングベースの営業と言えるでしょうか?
これは「マーケティングベースの営業」とは対極の「売り込み営業」です。

「売り込み営業」の問題は、
(1)お客様のニーズを無視して、売りたい商品を売り込んでも買ってもらえない
(2)営業マンが行きやすいお客様、買ってもらえそうと思うお客様にしか行かない
(3)営業マンは営業成果よりも大量の営業活動をすることを目標にしてしまう

営業マネージャーはメンバーに商品勉強をさせ、大量に営業活動をさせ、仕事をしている気分になっているかもしれませんが、これでは売れません。営業マンは疲弊するだけです。

このような突撃命令を出しているだけの営業マネージャーがなんと多いことか。

マーケティングベースの営業チームとは、
(1)お客様の困りごとやお悩み、実現したい将来の姿といったニーズを徹底的に理解する
(2)ニーズの強弱×採用インパクトの大小を考慮し、顧客の優先順位を決める
(3)ターゲット顧客に計画的に、組織的に営業活動を継続させる

これは、「マーケティング」と言うものが実現できている営業活動です。
この活動によって成果を出すことができるのです。

チームで取り組む3つのメリット

これらの活動を営業マン一人一人に求めても簡単ではありませんし、効率的でもありません。チームとしてマーケティング活動に取り組むことが大切です。

チームで取り組むことには3つのメリットがあります。

1)大きな目標を達成できる

1から100まで、一人の営業マンが取り組む集まりか、勝ち方を知った営業チームを作るか、どちらがいいですか?一人では達成できない大きな目標を達成できるのがチームです。

2)やる気が出る

一人で行うと萎えるときがあります。チームの一員として帰属意識を持ち、自らのミッションに取り組むことで、やる気が持続します。

3)能力があがる

助け合い、教えあうことで、能力が上がり成長します。営業マンのやりがいとなり、ロイヤルティも高まり定着します。

具体的な取り組み例

1)競合に押されていた装置事業で商談の決着率を高めて受注を伸ばした

この例では、過去の商談分析を徹底的に行いました。
私が赴任するまでの営業は、手あたり次第に営業を行っていました。そしてほとんどが競合に負けて受注できません。営業は競合に負けることが分かりながらも、命令に従って多くのお客様にアプローチを繰り返して疲弊していました。

私が赴任してまず営業全員で行ったのは、過去の勝ち商談と負け商談の分析です。

負けた商談を一つ一つ分析することで、負ける時はお客様のどんなニーズに対する商談なのか、その商談では自社の商品は競合の商品と比較して、どのように劣っているから選ばれないのかという、負ける理由が分かりました。その後は、このような負ける商談に行かないと決めました。

一方で数は少ないですが、勝ち商談もあります。この分析をすることで、勝つ商談とはお客様のどんなニーズの時か、その商談では自社の商品がどのように競合の商品より優れているか、採用される理由を明確にしました。
そうすると、ある3つのお客様のニーズでは自社の装置の強みが活きて、受注できる確率が高いことが分かりました。

そこで次に、この勝てるニーズを持っているお客様とは、どのような背景や困りごとを持っているのかを分析しました。そして顧客名をピックアップして営業部門全員で役割分担してアプローチしました。

負ける商談端に行かないことで、無駄な活動を省き効率化できます。そして勝てる見込みの高いお客様に営業活動を集中させることで、商談を獲得する確率は高くなり、受注を増やしていきました。

2)エンジニアリング事業で伸び悩んでいた成長事業を1年で230%成長

この例では、まずお客様のニーズを明確にしました。1システム導入すると2千万円~3千万円します。お客様はなぜこのような高額のシステムを入れようとするのか、その目的・ニーズを明確にしました。

そして、競合が多い中お客様が比較された結果、なぜ自社が採用されたのかを明確にしました。それが、お客様が選んでくれた自社の強みだからです。

実は私が赴任して、まず初めに営業マンに、何千万円もかけて自社のシステムを採用いただいたお客様について質問しました。

「お客様が、このシステムを導入された目的は何ですか?なぜこのシステムを入れなければいけなかったのですか?」

「採用されたとき、お客様は競合とどの観点で比較されて、自社のどの点が、どのように優れていると評価していただいたのですか?」

営業マンからは「分かりません」「営業が頑張ったからです」などと、明確な回答がありませんでした。これでは、せっかくお客様に選んでいただけて、お役に立てる強みがあるのに、たまたまニーズのあるお客様に出会い、偶然売れたということだけでした。

そこで、自社を採用していただいたお客様に、改めてヒヤリングさせていただき、導入の目的や、その背景などをまとめていきました。
すると採用いただいたお客様に共通のニーズや置かれている事業背景が浮かび上がってきたのです。

同じようなニーズを持たれているお客様をピックアップし、ターゲティングして営業活動を集中させた結果、売上が1年で230%成長しました。

まとめ

ご紹介した例は、それ以前は営業マンに突撃命令を出して「売り込み営業」をさせていた活動を、私が担当してからマーケティングベースの営業チームを作ることによって成果を出すことができた例です。

マーケティングベースの営業チームを作ることで成果につながることと、その重要性について理解していただけましたでしょうか。

ここでは、さらっと書き伝えましたが、実はマーケティングを営業現場で行うためには、マーケティングの知識や理解と共に、細部にわたる実行ノウハウや勝負所などが重要になります。

またチームで行うことが重要であり、スキル・テクニックと共にリーダーシップなども求められます。これらのことは、私が講師を務める研修などでお伝えしています。

マーケティングベースの営業とは、お客様のニーズを中心に置く営業のことです。特にお客様も気づいていないニーズ、潜在課題を発見して、その解決提案を行うことが、新規にお客様に採用していただく最重要ポイントになります。

次回は、チームとして顧客の課題発見と解決力を高める方法について解説していきます。
第4回テーマは、「チームとして顧客の課題発見と解決力を高める方法」

プロフィール

中村昌雄
ジャパンセールスマネジメント代表

中村昌雄氏

1990年にオムロン株式会社に入社。30代前半に2億円規模の競合切り替えを5件達成するなど頭角を現す。まさに法人営業とは経営や営業マネージャーの力量による組織戦だと確信し、上司や先輩の多大な支援を取り付けながら成果を重ねた。一方でマネージャーに力量がない営業部門ほど担当者に多くの活動と報告を求めるのみで業績があがらない実態に気づいていた。
管理職になりM&Aをした子会社に乗り込み戦略の再構築、営業の育成と再組織化に奮闘。オムロンでは部下85名、売上85億円などの部門長を歴任。営業の最前線で自ら陣頭指揮し6億円の競合を切替え、その波及で10億円の売上を獲得、また注力事業を230%成長させた実績などを誇る。
31年にわたり成功体験と挫折なども経験してきた。法人営業とは営業担当のスキルを問う以前に組織戦を戦うチーム力であり、営業リーダーこそが売る力持っている必要がある。そして支えるマネジメントによって社員の働きがいを両立させてこその経営だという信念も持っている。
実践してきた者だから伝えることができる、法人顧客の組織的意思決定を勝ち取ってきた経験とスキルで多くの企業を支援したい気持ちが強まり、「最強営業チームを作り売上を2倍にする実践型B2B営業コンサルタント」として起業、奔走している。

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