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インタビュー・コラム

【連載第2回】営業を強化するためのスキル体系

BtoB/法人営業の新規開拓メソッド

営業を強化するためのスキル体系

1.必要な営業スキルが定義され教えられていない

経営やマネジメントをされている限り、育成と業績を追及し続けられていると思います。
そんな中で、営業パーソンに必要なスキルを身につけてもらい、成果を出させたい。そのためには、どのような営業スキルを身につけて、売上をあげればよいのだろうか、とお考えだと思います。

今回は、営業の基本スキルと、特にB to Bで売上をあげていくために必要となる営業スキル力について解説します。

私は新人営業パーソンのころ、営業とは商品の説明をして、特長とメリットを訴え、買ってくださいと頭を下げることとしか思っていませんでした。新人営業パーソンは新しいお客様を担当させられますが、新しいお客様に、そんな営業活動をしても当然売れませんでした。

だからと言って、必要な営業スキルと言うものを教えてくれる上司や先輩もいませんでした。教えこまれたのは商品知識だけです。必要な営業スキルを体系づけて社員に教育できていないため、営業が属人化してしまっているのが現実です。

この記事を読めば、営業に必要な基礎スキルと、特に法人営業で必要となるスキルについて理解できます。特にB to Bで売上拡大と目標を達成するための、営業強化の取組の方向が分かります。

2.事業ごとに必要なスキルが異なる

営業と言っても、事業によって必要な営業スキルは異なります。
販売先企業(business)個人(consumer)の違いで、大きく2つの事業体系があります。

B to B(Business to Business):企業に対して販売する事業
B to C(Business to Consumer):店舗や流通を通じて個人に販売する事業

B to Cは個人向けの営業です。個人に採用の決心をしていただく営業です。「可愛い」「カッコいい」「欲しい!」という個人の感情によって購入される、ファンベースの購入と言われています。

一方、B to Bは企業向けの営業です。企業としての採用の決心をしていただく営業です。事業の継続に必要な購入のため、課題解決型の購入と言われます。

このそれぞれの事業に合わせた営業があり、必要とされる営業スキルは異なります。営業に必要なスキルは、共通として必要な基礎スキルの上に、B to B・B to Cに特有の、特に必要なスキルがあります。

以下に、それぞれのスキルについて解説します。

1)共通スキル

B to Bや、B to Cと分ける以前に、共通の営業として必要とされるスキルがあります。営業のベースとなるスキルです。

(1)信頼関係
人々は信頼できる人からのみ購入を行います。感情的な要素が購買の決定に影響を与え、その後に理論的な理由で正当化されます。この信頼関係が根底にあることが重要です。

(2)マナー・礼儀
購入するものよりも、誰から購入するかが重要視されます。つまり、お客様への適切なマナーや礼儀が欠けていると、購入意欲を引き出すことはできません。

(3)行動力
営業としては、行動しなければ結果は出ません。成果を生み出すためには積極的に行動することが必要です。行動力は営業における基本的なスキルとなります。

営業の基礎スキルとして、信頼関係、マナー・礼儀、行動力の3つが重要です。

2)B to Cで必要な営業スキル

ここで必要になるスキルは、目の前の個人のお客様に購入の決心をしていただき、申し込みをしていただく営業スキルです。

営業パーソンとお客様の直接の折衝によって決まるので、営業パーソンの個人的な営業スキルが重要になってきます。営業パーソンの印象、流れるような会話、信頼、プレゼン、クロージング技術などです。

(1)コミュニケーション能力
営業パーソンが信頼を得ることが個人の顧客から受注するために重要な要因になります。顧客のニーズや要望を正確に把握し、適切なアプローチや提案を行うため相手の話を聞き、理解し、整理して、バランスの取れたやり取りで信頼を得るコミュニケーションスキルが必要です。

(2)プレゼンテーション能力
お客様の困りごとを解決することを目の前のお客様に理解してもらうために、自社の製品やサービスの魅力やメリットを分かりやすく伝え、興味を持ってもらうためのプレゼンテーション能力が重要になります。

(3)クロージング能力
購入に至る最終ステップをスムーズに進め適切なタイミングでオーダー確定につなげるために、今購入するメリット、購入しないときの痛み、不安を取り除き発注の背中を押すクロージング能力が必要です。

このようにB to Cの営業では特に、コミュニケーション能力、プレゼンテーション能力、クロージング能力が重要な営業スキルとなります。B to Cは、個人の能力が成果に直結する

3)B to Bで必要な営業スキル

B to Bでは、顧客が企業であることから、特に以下の営業スキルが必要となります。

(1)戦略性、マーケティング力
市場・ニーズ・強みを絞り込みターゲティングして集中する戦略性です。市場調査や競合分析を行い、企業が抱える課題やニーズを的確に把握し、それを踏まえたマーケティング戦略を立てることが必要です。

(2)課題の発見と解決能力
どれだけ潜在的な課題を突き止めて解決提案するかの解決力のことです。顧客以上に顧客を知り、課題の解決提案をするための分析や解決力が必要です。

(3)組織を巻き込む力
B to Bでは事業に必要な継続した取引が前提となるため、会社への信頼がベースとなります。顧客企業内での複数の部門や担当者と関わり、企業と企業が長く付き合うための信用獲得のためお互いの組織を巻き込む力が営業には必要になります。

前述したように、B to Cでは営業パーソン個人のスキルが成果に大きな影響を与えます。一方でB to Bでは、営業パーソン個人以前に、営業組織としてこれらのスキルを備える必要があります。

そもそもB to Bとは企業同士の取引であり、営業パーソン個人のスタンドプレーで成果が出るものではなく、営業は組織として行うべきものだからです。

ゆえにB to B営業で成果を出すには、スキルを身に着けた強い営業チームをつくることが大切になります。

3)B to B営業は組織戦でこそ成果を出すことができる

私は営業担当のころ、数億円の新規開拓を連発するなど、大きな営業成果を出してきました。その秘訣は、自社のいろいろなリソースをうまく使いつくしたからです。若手営業パーソンでしたが、上司や先輩や、社内のサポート部門を大きく巻き込み、ダイナミックに営業活動を展開したからです。30歳の一般社員の営業パーソンが、部長や支店長を引き回すようにして一緒にお客様を訪問してもらい、協力してもらいました。

成果を出したのは私が優秀だったからではありません。ただ新規開拓に熱心で、失敗のリスクを恐れず、厚かましく上司を含めて社内の組織と人を巻き込んだからです。
そうすると、必要な戦略性や解決力などのスキルは、協力してくれる人たちがカバーしてくれるのです。

これが組織力で営業をした成果です。ただこれは本当の組織力とは言いません。営業パーソンが勝手に組織を使った成果に過ぎないからです。

B to B営業で本当に必要なスキルは、営業組織としてスキルを身につけ、すべての営業パーソンが成果を出せるように組織で営業活動を展開するスキルです。

私が営業マネージャーになってからは、メンバー全員が成果を出せるような組織的な営業を行っていきました。営業部門として戦略的マーケティングを行い、チームで顧客の課題発見と解決提案を作り、組織でお客様に営業活動をかけました。

その結果、メンバーに数千万円、数億円の新規獲得の成果を出させてあげることができました。

法人営業とは、個人の営業力も大切ですが、それ以前に組織に営業力をつけることが大切です。組織営業して成果を出すための、強い営業チームを作りましょう。

次回は、BtoB/法人営業についてさらに触れていきます。
第3回テーマは、「マーケティングベースの営業チーム作り」

プロフィール

中村昌雄
ジャパンセールスマネジメント代表

中村昌雄氏

1990年にオムロン株式会社に入社。30代前半に2億円規模の競合切り替えを5件達成するなど頭角を現す。まさに法人営業とは経営や営業マネージャーの力量による組織戦だと確信し、上司や先輩の多大な支援を取り付けながら成果を重ねた。一方でマネージャーに力量がない営業部門ほど担当者に多くの活動と報告を求めるのみで業績があがらない実態に気づいていた。
管理職になりM&Aをした子会社に乗り込み戦略の再構築、営業の育成と再組織化に奮闘。オムロンでは部下85名、売上85億円などの部門長を歴任。営業の最前線で自ら陣頭指揮し6億円の競合を切替え、その波及で10億円の売上を獲得、また注力事業を230%成長させた実績などを誇る。
31年にわたり成功体験と挫折なども経験してきた。法人営業とは営業担当のスキルを問う以前に組織戦を戦うチーム力であり、営業リーダーこそが売る力持っている必要がある。そして支えるマネジメントによって社員の働きがいを両立させてこその経営だという信念も持っている。
実践してきた者だから伝えることができる、法人顧客の組織的意思決定を勝ち取ってきた経験とスキルで多くの企業を支援したい気持ちが強まり、「最強営業チームを作り売上を2倍にする実践型B2B営業コンサルタント」として起業、奔走している。

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